過去40年間のポートフォリオ経営研究の成果とその評価を発表しています。
Corporate Portfolio Management:Appraising Four Decades of Academic Research
論文の要旨は?
ある程度の大きさ以上の企業は、1つの事業しかないのは珍しく、大抵は複数の事業を営んでいます。そのためポートフォリオ経営(Corporate Portfolio Management)が必要になってきます。
ところが、ポートフォリオ経営は盛んに用いられているにもかかわらず、学会ではほぼ研究成果が発表されません。意図的というくらい無視されています。なぜそんな事になっているのか、過去40年間のポートフォリオ経営の研究成果を評価し、将来の研究の提言をしています。
ポートフォリオ経営が広まったのは、やはりBCGの発表が大きかった
ポートフォリオと言えば、やはりBCG(Boston Consulting Group)のProduct Portfolioです。市場の伸びと製品のシェアの2軸で評価するあれです。誰でも一度は、ビジネスの会話の中でCash Cow(訳は金のなる木です。やはり狩猟民族と農耕民族の違いでしょうか)やDog(負け犬)という単語を聴いた事があると思います。
分かり易さの功罪
Product Portfolioが広まったのは、物凄く分かり易かったからです。逆に、あまりにも単純化しすぎている、という批判を浴びました。事業を評価するのには、たった1つの物差しで決めるものでもありません。これに対しては、ポートフォリオ経営(CPM)は意思決定を指し示すものではなく、戦略的な思考を支えるツールだとこの論文では指摘しています。
欧米では、80年代にポートフォリオ経営が導入されている
面白かったのは、どのようにして企業がポートフォリオ経営を取り入れていったかについての過去の論文の記述です。
- 企業または戦略担当者はポートフォリオ経営のコンセプトを様々な形で適用した。ある状況にのみポートフォリオ経営のマトリックスを戦略的な経営ツールとして使う場合もあり、また、各事業を統合的にポートフォリオ管理する経営の仕組みを作り上げている場合もある。1981, 1998
- 事業の多様化のタイプにより、企業が求め維持していくポートフォリオ経営の方法は異なる。ポートフォリオマネジメントの仕組みは多角的経営の会社には広く使われている。一方コングロマリットや、自明であるが単一事業の企業はポートフォリオ経営は殆ど、あるいは全く行っていない。1981
- 成長が著しく伸び悩んだり伸びすぎる企業、戦略思考が欠けている企業のマネジャーはポートフォリ経営を取り入れようとする 1981 1982
- 明確な基準と異なる視点(例えば、本社とビジネスユニット)に基づいて適切なSBU(戦略的ビジネスユニット)を定義することは、ポートフォリオ経営を効率的に行うための重要な成功要因です 1983
各項の数字は論文の発表年です。1980年代の初めには、既にポートフォリオ経営が浸透しているのが分かります。
日本でもポートフォリオ経営が確実に広がっている
有価証券報告書をもとに時価総額上位50社のポートフォリオマネジメントの導入状況を調べた結果では、2004年に初めて三井物産がポートフォリオ経営を行っている事を公開して以来、2016年にはそれが15社にまで増えています。日本でもやっとポートフォリオ経営の重要性が認知されてきたのが分かります。
2016年版 ポートフォリオ導入度ランキング
【時価総額上位50社編】
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斜め読みした論文
Corporate Portfolio Management:Appraising Four Decades of Academic Research
by Michael Nippa, Ulrich Pidun, and Harald Rubner
Academy of Management Perspectives 2010.10
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