ロジャーズの手法は、カウンセリングに留まらず、色々な交渉事、普段のビジネスの商談から、更には最も特殊と思われる人質事件の現場にも幅広く使われています。
自分以外の他人を変える事は困難
会話だけで他人の考え方を変える事は、本当に難しいです。
これは何もカウンセリングに限った事ではなく、日常の交渉事にも言えます。こちらの正しさを理路整然として伝えてもあまり効果は有りませんし、情に訴えようとしてもかえって足元を見られるのが落ちです。
結局は、自らが気付いて、変わってもらうしか方法は有りません。
FBIの交渉術のベースにもなっている、ロジャーズの理論
初めてロジャーズの手法を知ったのは、産業カウンセラーの養成講座です。日本人が考えるハウ・トゥーとは程遠いその手法に当初から戸惑いました。
「とりあえずオウム返し、あとはクライエントの変化をひたすら待つ」、こんな風に誤解してしまいました。カウンセリングの練習中も、「どれだけ待てばいいのですか?」という歌声が、どこからか聞こえてきそうな感じでした。
クリス・ヴォスの「逆転交渉術――まずは『ノー』を引き出せ」を読んで、FBIの犯罪者との交渉術がロジャーズの理論がベースになっていたのを知り、少し驚きました。人質を取り、要求が通らなかったら今にも殺しそう犯罪者に対して、ロジャーズの理論がベースで交渉し、そのような状態の犯罪者が変化するのを待つのは、悠長な感じがしました。
FBIのCNU(Crisis Negotiation Unit)の交渉術は、Behavioral Change Stairway Model(BCSM)と呼ばれ、以下の5ステージを定義しています。
- active listening(傾聴)
- empathy(共感)
- rapport(ラポール)
- influence(影響)
- behavioral change(行動変化)
特に心理学を勉強していなくても、上司向けの「部下との関係」に関する研修等で、ラポールを知った方も最近では多いと思います。
ラポール (rapport) とは臨床心理学の用語で、セラピストとクライエントとの間の心的状態を表す。もとは、オーストリアの精神科医フランツ・アントン・メスメルが「動物磁気」に感応したクライエントとの間に生じた関係を表現するために用いた語である。その後、セラピストとクライエントの間に、相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す語として用いられるようになった。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用
著者のクリスはロジャーズの理論を全面的に信頼しており、ビジネスでの交渉と犯罪者との交渉でも差を認めていません。また、テクニカルな話術で相手にYESと言わせることも否定しており、自発的な行動変化のみが交渉成功のカギとしています。
本当の変化は、セラピストがクライアントを受け入れたときにのみ起こる。「無条件の前向きな考え方」として知られるアプローチだ。しかし、ロジャーズが説明したように、自分以外の人々(最初は両親)がこれは正しいという発言、正しいと思ってやっている行動に依存した愛や賞賛、承認を、私たちの大部分は、期待するようになる。
つまり、私たちの多くが経験する「前向きな考え方」は条件付きであるため、自分が本当は誰で、何を考えているかを隠す習慣を身につけほとんど開示しなくなる。代わりに承認を得るために言葉を調整する
Chris Voss ,Tahl Raz"Never Split the Difference"の抄訳です
ここの部分を読んで、あらためてロジャーズについて考えるようになりました。 理論の精緻化を拒否し、それよりも常にクライエントの自らの変化を第一に考えたロジャーズが、今のセラピーの状況を見たら何と言うか、きいてみたいですね。
頓挫している、ロジャーズの読み直しを再決意
随分前から、ロジャーズの論文を読み直し始めたものの、遅々として進んでいません。
最初は気になっていたものの、最近ではすっかり忘れていました。やっぱり暗記が目的の養成講座の時とは違って、本当に理解しようとして読むと難しい事が多くて辛くなってきます。英語の理解力の低さが更に追い打ちをかけます。
たまたま読んだ本にロジャーズが出てきて、これは何かのキューに違いない、あらためて続きを読もう、と決心しました。
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今日紹介した本です
「逆転交渉術」は普段のビジネスの交渉でも使えておススメです。あと、読みかけのカールロジャーズの論文集、翻訳本は上下2冊に分かれるようです。
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