日本語の母音(あいうえお)のうち、母音(i)の機能について、紹介します。
日本語は、語形成上の機能を母音に持たせた言語
人工語であるエスペラント語は、品詞の区別を語の末尾につけた母音でおこないます。日本語もエスペラント語と同じく、母音に語形成上の機能を持たせた言語です。
例えば、「付く」という動詞は、末尾をa母音にして「ツカ(束)」、i母音にして「付き(自動詞的名詞)」、e母音にして「付け(他動詞的名詞)」となります。
今回は、末尾に母音iをつけた名詞化を紹介します。
母音(i)は、動詞と名詞を明確に区別するため
uで終わる名詞には、季節名のハル、ナツや、時間のヒル、ヨル、生活のミズ、ウスなど、生活と密着した原初的と考えられる語が多いです。語末のuは本来動詞を表す形式で、これらの語は動詞をそのまま名詞として用いています。動詞と名詞が未分化なのは幼児語や未開社会の言語に見られる特徴だそうです。
日本語発達のある段階で、名詞にはiを付して動詞と明確に区別する動きが現れたと考えられます。
木の古形はクダモノ(木な物)、ククノチ(木の霊)に見られるようにクです。身の古形はむくろ、ムザネのムです。これでは名詞かどうかわからないため、iを付加するように変化して「木」や「身」が成立しました。
上代には、母音は八つあったとされ、なんとiとeとoには甲乙2種類があったそうです。uiが一音化する過程にあった音が乙類のイ段音です。ですから、「木」と「身」は乙類に当たります。
「月」のキも乙類です。ツクにiを付し、tukui --> tuki(乙類)となりました。
木 ku + i --> kui --> ki
身 mu + i --> mui --> mi
月 tuku + i --> tukui --> tuki
渡部正路『大和言葉の作り方』より引用
母音(i)は、歴史が長い日本語の転機となる母音だった
母音(i)は、動詞と名詞の明確な区別化という日本語発達の転機となった母音でした。イに甲乙の2種類があったというのは驚きでした。ちなみに、上代とは奈良時代ごろを指します。
次回は、母音(e)の説明をしたいと思います。
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