平安時代、紫式部の造語法を紹介します
紫式部流、新語作成の方法
新しい言葉はどうやって生まれるのでしょうか。
平安時代に「源氏物語」を書いた紫式部は、色々と新しい言葉を作り出し、細やかに感情を表現しました。
今回は、新しく語を作る紫式部の方法を紹介します。
組み合わせの方法を駆使し、縦横無尽に新語を作成
大野先生によると、語と語を足すのが日本語の新しい語を作る方法です。
日本語の造語法は、全体として見渡すと、結局足し合わせ方式によっている。つまり、二つの語を足し合わせて新しい観念を表現するのが、日本語の新語の作り方の大部分を占めている。
ここはちょっと気になります。最初に基本的な語の枠を作ると、後は、新しい語は作らず、単なる組み合わせに方法が固定されてしまう。何となく、日本人の発想の根本のように思えます。
これを紫式部は、現代人から見ると「システマティック」と言える方法で、縦横無尽に新語を作っていきました。
たとえば、ウラメシという語がある。それは、うらめしいという感情をそのまま表現した語である。これの上にモノという接頭語を加えると、モノウラメシとなる。モノは先に述べたように、何となく、さだかならぬの意を添える。従って、モノウラメシとは、どことなくうらめしい感じがするの意となる。
(中略)
他方、ウラメシの下に接尾語ゲを加えると、ウラメシゲとなる。接尾語のゲは、ケという、見た様子、見た格好を示す語の転じた形で、ウラメシゲナリとは、見た所うらめしそうであると客観的に描写する語である。
それにさらに、モノを加えれば、モノウラメシゲナリとなり、どことなくうらめしそうに見えるという意で、これはウラメシゲナリを和らげた表現になる。
他にも、
形容詞の意味を和らげる方式としては、・・・ヤカ、・・・ラカという接尾語を用いる方式も駆使されている。(中略)ハナヤカ(花)・ニコヤカ(和)などの語が作られ、
また、ラカのラは、見た目の状態を表す接尾語で、ツブラ(円)・ハダラ(散)・マダラ(斑)・などと使われ、その下に接尾語カがついてラカとなり、アサラカ(浅)・アカラカ(赤)・アララカ(荒)・ウスラカ(薄)など多数が作り出されたのである
(中略)また、当時、形容詞の語幹を重ねてあたらしい形容詞を作る造語法があった。たとえば、ウトシ(疎)の語幹ウトを重ねてウトウトシとする類である。これはウトシが疎遠であると断定するに対して、いかにも疎遠な感じであると、意味をゆるめながら、しかも受ける印象を強調する語である。
引用は全て大野晋『日本語をさかのぼる』
いざ書こうと思った時に、自分の感情を表現するだけの言葉が全然足りないと感じて、どんどん作っていった紫式部は凄いですね。
当時の男性は、漢文が主流で思考停止に
今日は、「源氏物語」を題材に、紫式部がとった新語作成の方法を紹介しました。ここには重要な話が有ります。なぜ紫式部をはじめ多くの女性がクリエイティブだったのか?
当時、男性は漢文、女性はやまと言葉で書いていました。漢文は所詮借り物で使いこなせず、創意工夫も無くただただ中国のモノマネで思考停止の状態でした。
これって、やたら横文字を使う現代の我々に似てませんか?
語源に興味があるなら、これもおススメ!
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