無罪モラトリアム
椎名林檎 しいなりんご
かつて日本人は文字を持っていませんでした。中国から漢字を輸入した後に、和歌など日本の文化に合わせるため、相当な苦労の末、ひらがなを発明しました。
このアルバムを聴いていると、そんな事が頭に浮かびました。ロックが輸入され多くの日本人ロッカーが誕生していき、日本オリジナルの音楽としての完成形を女性アーティストが示してくれたのがこのアルバムです。まさに、ひらがなのロックです。
ノイジーなギターで始まる1曲目の『正しい街』は、曲調はメロディアスで聞きやすい曲です。歌詞は意味不明なのに、「都会では冬の匂いも正しくない」、断片的に聞き取れるフレーズがとても印象的です。
2曲目の『歌舞伎町の女王』は、歌謡曲風のメロディ。歌舞伎町の女王と呼ばれた母が自分を捨てて男と出て行き、自分が新しい歌舞伎町の女王となるという、ストーリー仕立ての歌詞です。
3曲目が『丸の内サディスティック』。歌詞はとことん意味不明でナンセンス、語呂合わせやダブルミーニングなど、言葉を楽しそうにもて遊んでいる感じがします。冒頭のキーボードの音もクールで、コード進行がカッコよく、終わりにはジャズ風のスキャットも入る、このアルバムのベストトラックです。他の曲も良い曲なのは間違いなくても、この3曲はアルバムのなかでも特にかっこいい!
椎名林檎が、ひらがなを駆使して名作を書いた紫式部や清少納言のように思えてきました。結局この国のオリジナルは、女性が作っている!
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